山岳地帯に立地する太陽光発電施設の設置に伴い、パネル崩落のリスクが懸念されています。
読売新聞による調査によれば、全国の太陽光施設のうち、「土砂災害警戒区域」内に位置し、周辺に住宅などが存在するものが230箇所以上確認されています。
一部の自治体では、リスクの高い場所への設置を制限する動きがあり、国も規制の在り方を検討しています。(平井宏一郎、奥村健一)
国立環境研究所(茨城県)の2021年の調査結果によると、出力500キロ・ワット以上の太陽光施設は全国に8725箇所存在しています。
読売新聞は、国立環境研究所が作成した各施設の地図データを元に、警戒区域内に位置する太陽光発電施設を抽出しました。
特に、警戒区域内で施設の下方に土砂が流れる方向に住宅や道路、線路が存在する場所に絞り込んだ結果、少なくとも231箇所の施設が特定されました。
その中でも、「特別警戒区域」に立地している施設は34箇所確認されました。
231箇所の施設を都道府県別に見ると、兵庫県が22箇所で最も多く、岐阜県が15箇所、長崎県も14箇所ありました。
出力500キロ・ワットの施設の場合、敷設されたパネルの面積は約5000平方メートルであり、パネルが押し流されて住宅や道路に被害をもたらすリスクがあります。
また、施設の設置時に森林伐採や造成工事が行われている場合、災害発生の危険性が高まる可能性もあります。
傾斜地への太陽光発電施設の設置が相次いでいるのは、国が2012年以降、再生可能エネルギーの推進を進めているためです。
太陽光発電の割合は、2011年度の0.4%から2020年度には7.9%まで増加しました。
施設の設置にとって、傾斜地は平地よりも安価で広い土地を確保しやすいという利点があります。
太陽光発電施設の設置に関し、条例で規制を行う自治体も存在
太陽光発電施設の設置に関する国の法律では、森林法に基づき一定規模の伐採が行われる場合は排水設備などが求められますが、警戒区域内でも太陽光施設の設置は禁止されていません。
事業者は経済産業省に対して電気事業法に基づく届け出を行う必要がありますが、審査は主に感電対策やパネルの強度などに焦点を当てており、その場所の災害リスクが主眼ではありません。
経済産業省によると、実際に崩落などの事故は発生しています。
具体的な場所は公表されていませんが、小規模な事故を含めると、2017年度以降の5年間で450件報告されています。
神戸市は、2018年の西日本豪雨で太陽光パネルが山陽新幹線の線路近くまで崩落したことを受け、警戒区域内での設置を禁止する条例を制定しました。
他の自治体でも、警戒区域内での設置を禁止したり、設置前に災害リスクを審査したりする条例を作成する動きが見られます。
地方自治研究機構によれば、2022年4月1日時点で228市町村と7県においてそのような条例が存在しています。
政府も「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」を今国会に提出し、事業者に対して設置前に住民説明会を開催することを義務付けていますが、既に設置されている施設への安全評価などには多くの課題が残っています。
なお、「土砂災害警戒区域」は、土砂災害防止法に基づき、都道府県が現地調査を行い、土石流や崖崩れ、地滑りの恐れがある場所として指定されるものです。
全国で約68万か所の指定地点があり、より大きな被害が予想される場所は特別警戒区域に指定されます。
まとめ
・山の傾斜地に相次いで太陽光発電施設が設置され、パネルの崩落リスクが懸念されています。
・読売新聞の調査によると、全国の太陽光施設の中で、230カ所以上が「土砂災害警戒区域」内に立地し、周辺に住宅などが存在していることが確認されました。
一部の自治体では、高リスク地域への設置を禁止する動きがあり、国も規制策の検討を進めています。
・特に「特別警戒区域」に立地している施設は34カ所確認されました。都道府県別では、兵庫県が22カ所で最も多く、岐阜県が15カ所、長崎県も14カ所の施設が該当しました。
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